貝掛温泉は奥湯沢にある秘湯の宿。庄屋造りの佇まいはノスタルジックな雪国情緒を演出し、料理と地酒の相性は抜群。目に効能があるとされる温泉をじっくりと愉しめる。この辺りは日本有数の豪雪地帯のため、冬季のアクセスには運転を十分に注意したい。
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貝掛温泉に訪れるのは、実に4年連続、いわば4回目のご当選(政治家かいっ)。酷使する眼の湯治を兼ねて、地産地消の料理と地酒と南魚沼塩沢産コシヒカリを存分に味わう。もはや毎年のお約束行事ともいえる貝掛行脚が楽しみでしょうがない。
例年、冬から初春の間に訪れるので、雪は慣れているつもりだが、三月上旬とはいえ、今年は雪が多い。苗場スキー場で悪戦苦闘するスノーボードを早めに切り上げ、一路貝掛温泉に向かった。
国道沿いにあるアプローチ入口に着いたが、貝掛温泉バス停を見ると雪にすっかり埋まり、宿への細いアクセス道路はまるで雪の切り通し。思わず「マジっすか?」とボヤきたくなるほどの異常な積雪量である。対向車が来たらど~すんべ?…と思いながらハンドルを握る。
ゆっくりと斜度のある貝掛坂を下り、清津川にかかる貝掛橋まで来ると、昨年あった案内表示が雪に埋もれて見えない。いや、もしかしたら雪で壊れたのかもしれない。それほどまでに見慣れた風景が雪で一変している。
車幅ギリギリで橋を渡ったのもつかの間、対向車がくるではないか。どうにか相手側に少しバックをしてもらい、退避スペースでやり過ごし、何とか関門通過。ようやく駐車場に到着する。
すると驚くことに駐車場には車がいっぱい。こんな大雪にもかかわらず、人気の高さがうかがえる。車を駐め、荷物を持ちながら、スロープ下から宿を見上げると、屋根が雪に覆われるどころか、埋もれるという表現がぴったり。
でも、さすがにスロープは除雪がされ、一本道が建物まで続いている。そして降りしきる雪の向こうに秘湯の宿が佇んでいた。
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館内に入ると、やんわりとした暖かさにホッとする。目に飛び込むのは、お約束の大きな米俵のオブジェ。これぞ米処新潟のシンボル。今年も契約農家から取り寄せた極上米を味わえる喜びが湧いてくる。
庄屋造りの館内は、ゆとりを感じる和の空間。宿の顔というべき玄関棟は懐かしき田舎の趣き。壁にかかるかんじきや藁細工の雪国らしい装備品、蒸籠がのった囲炉裏、新潟の地酒を並べる陳列棚、変わらぬ光景が出迎えてくれる。
明治2年築の本館は木の温もりと重厚感が織りなすレトロ空間。しかし建物の端々をみると、昔の名残が垣間見える。例えば本館階段の踏板は間隔が狭く急勾配であり、明治時代部屋のある本館2階廊下の天井はあまり高くない。昔の日本人の体格がうかがい知れる。
館内施設は食事処(昼食時に営業している)と売店のほかに夜間に利用できる整体処があるが、娯楽設備はない。しかしこの宿には娯楽設備は不要だろう。ここは「静かに温泉を嗜む大人の宿」。それ以上でもそれ以下でもない。気取った表現かもしないが、この言葉がとてもしっくりくる。
スマホを見るとやはり圏外。秘湯だからこれはしょうがない。帳場では目玉おやじのお出迎え。あれっ昨年もいたかなぁ? 浴場前にいたのは知っているが、帳場に移動したのか?…目玉おやじを見ていると、「またご利用いただきまして、ありがとうございます」との声に、そうそうチェックインしないとね。
追加料理のことを聞くと、残念ながら山菜はまだ早いらしい。できればで山菜天麩羅を味わいたかったが、この時期は「岩魚のお造り」とのこと。う~ん…よし食べよう! 五秒で即決し、岩魚のお造りが夕餉に加わることとなった。
囲炉裏で恒例のメグスリノキ茶と笹団子のウェルカムサービスをいただき、案内スタッフと一緒に「伯爵様へごあんな~い」はカリオストロの城…じゃなかった、お部屋までごあんな~い。
案内スタッフも常連だと聞いているのか、館内説明も「分かりますよね」との言葉。え~え~知っていますとも。「勝手知ったる何とやらですから」と答えると、案内係の女の子も笑っている。しょ~もないオヤジトークを炸裂させる体たらくだが、まっオヤジなので許してつかわさい。
さて、今年の部屋はどんな感じだろうか…。
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案内してもらった部屋は本館一階のトイレと洗面台のある7帖半の和室。以外にも帳場から近い。いや帳場だけではなく、天国に一番近い島…もとい浴場にいちばん近い部屋なのだ。リーズナブルな部屋を選んだことが幸い、浴場まで最短距離の部屋をキープできたのだ。うむ実に素晴らすぃ!
まずは荷物の整理をしながらお茶を飲む。どうせ浴場まで10秒で行けるからパンツ一丁でといきたいが、それではただの変態になりはべぬ。お茶菓子を食べ、パパっと浴衣に着替えて準備万端。
ほなでっぱつ!
アクセス10秒の素晴らしさで「湯殿 悦道大山」と掲げられる湯殿の暖簾をくぐると、またまた目玉おやじのお出迎え。あれっ二体あったのか。しかし「目の湯治」と目玉おやじは合うなぁ…なんて感心している場合じゃない。温泉や温泉!
脱衣所に入り、浴衣から超速脱皮。ど~んと大浴場の扉を開けるが…「寒い!」そう浴場内はかなり寒い。確かに寒いけど、まず身体と髪を洗い汚れを落さにゃいかん。温泉を汚してはいけない。最低限のマナーは守らねばっ。
しっかりと身体と頭を洗ったあとは温泉パラダイス。ちょっと寒いが、ぬる湯でまったり時間をかけ、寒くなったらあつ湯でほっこり。極寒の露天風呂は湯口近くで何とか凌ぎ、あつ湯で生き返る。あっという間の3時間。至極の時間は過ぎ去る。
そして夕食。昨年と細かな献立の違いはあるが、やはり新潟の地酒と料理の相性は抜群。ほろ酔い気分で食べた南魚沼塩沢産のコシヒカリは、変わらずの絶品。別注文の岩魚のお造りは、ほのかに甘い繊細な風味。塩焼きと合わせ岩魚三昧とは贅沢なことこのうえなし!
そして食後もただでは帰らない。売店でコシヒカリソフトクリーム買い、暖かい部屋に戻ってかぶりつく。「小さな幸せ大きな過ち」カロリー過多は合点承知の助。美味いんだなぁこれが。
食べ終わると強烈な睡魔襲来。もっと温泉に入りたいが、この誘惑には勝てそうにない。一時間だけ…と、スマホのタイマーをセットして気絶すること一時間…入替になった大浴場へ向かい、至極の温泉時間を再開する。結局この日は5時間以上温泉を堪能した。
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次の朝。5時過ぎに布団から這い出して温泉時間のスタート。さすがにこの時間はまだ誰もいない。ウトウトしながら温泉に入っていたら、すぐに朝飯の時間になっている。えっもう三時間経ったの?
朝食はやはり美味い。昨年とは若干献立が変わっているのもあるが、のどぐろが健在なのが嬉しい。禁断の「のどぐろごはん」でまず一杯。「とろろごはん」で二杯。そして「温泉玉子ごはん」でダメ押しの三杯。まるで学習効果なし。分かっているけど止まらない。
もっとゆっくりしたいが、スキー場がオイラを待っている。名残を惜しみながらチェックアウト…したが駐車場にきてビックリ。
ガビ~ン! (これは死語っ)車がない? いや完全に雪に埋もれている。一晩でこんなになるのね。愛車救出に10分以上要したことはいうまでもない。
こうして大雪に覆われた4度目の貝掛温泉もあっという間に過ぎ去った。いつもながら、温泉、料理、サービスのクオリティは高く、料金以上の満足感に包まれる。つまり総合力、宿のトータルバランスがいいんだよね。
また来年も来れるかな…「くる~きっとくる~♪」(貞子かいっ!) 当分、貝掛通いは続きそうだ。
(2015.10 更新)
住所 | 新潟県南魚沼郡湯沢町三俣686 | TEL | 025-788-9911 |
URL | http://www.kaikake.jp | IN:OUT | 14:00 : 10:30 |
宿泊料金 | 14,850円~ [2名利用1人料金] | 立寄入浴 | 10:30~15:00 (14時受付終了) [平日1000円 土日祝1200円] |
客室数 | 和室 28 | 食事場所 | 食事処 |
駐車場 | あり | 送迎 | 貝掛温泉前バス停まで送迎あり |
主な泉質 | ナトリウム・カルシウム-塩化物温泉 | 温泉利用 | 源泉100%かけ流し |
浴場設備 | 大浴場・露天風呂 | 塩素消毒 | 塩素消毒なし |