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(2014)
山の湯は越後湯沢温泉にある共同浴場。山中に佇む山小屋のような外観が特徴的。上越新幹線の開通後、一大リゾートとして開発された湯沢温泉にあって、昔の湯沢温泉を偲ばせる素朴さは、他の共同浴場とは明らかに趣が異なる。
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今回の訪問は3月30日。営業を終了するスキー場も出てくる中、雪山シーズンもいよいよ終盤というところ。「山の湯」に入ることができるのも今シーズン最後かもしれない…そう思うと、この「素朴」な湯に自然に足が向いた。
「素朴」と表現したが、否定的な表現ではない。これは褒め言葉である。元来、温泉は「素朴」なもの。純粋に湧き出すお湯にただ入るだけ。余分な設備は不必要であり、温泉の湧出量に見合った浴槽と脱衣所があればいい。
だから昔ながらの共同浴場は温泉の品質は抜群によく、そして驚くほど入浴料金は安い。本来それだけでいいはずなのだが…。
たくさんの人を入れようとすると浴槽を広げなくてはならない。するとお湯が足りないから加水してお湯を増やす。そして温度が下がるから加温する。矛盾を取り繕うためのイタチごっこ。結果として設備に費用がかかり、入浴料金も高くなる。残念ながら…一般的な日帰り温泉はそのような傾向が強い。
温泉の本質を理解しよう(楽しもう)と思ったら、余計なもの(過剰な設備)はいらない。司馬遼太郎の「坂の上の雲」に登場する秋山好古の言葉を借りるなら、「物事は単純な方がええ」ということ。
すなわち物事の「本質」を理解しようと思ったら、まわりにある鎧をはぎ取った方が解りやすい。だから山の湯では温泉の「本質」を楽しめるのである。
そんなことを温泉につかりながら考えてしまうほど、素晴らしい湯である。湯の温度は適温からやや熱め。温度調整せずにそのまま源泉が注がれているが、これは本当に奇跡的とも表現できる状態である。
アルカリ性であるばかりか硫黄成分がイオンの状態で存在し、お湯の感触はとても柔らかい。フレッシュな温泉であるが、余計なトゲトゲしさがなく熟成された丸さを感じる。
前日に入った六日町温泉(動力揚湯)と比べてもその差がよく分かる。含有する硫黄成分の差はあるだろうが、肌触りと温度を感じる感覚が違う。温泉が確かに丸い。優しい感触が伝わってくる。
これが自然に湧出する温泉の力ということだろう。ポンプ等を使って汲み上げる「動力揚湯泉」をフレッシュで若いボジョレヌーボーに例えると、「自然湧出泉」は熟成されたワインのようなもの。
好みの問題はあるだろうが、私は「熟成」のほうがいい。やはり素朴な共同浴場には「熟成」された温泉の方が似合う。
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ところで、この山の湯は、文豪、川端康成が雪国執筆のため湯沢に逗留した際に入った温泉と同じ源泉を引いている。地元の人々は愛情も込めて「やまんぽちゃ」と呼んでいるそうだ。湯沢温泉には数軒の共同浴場があるが、この「山の湯」は間違いなく最上級。どこにしようかと迷ったなら、この「山の湯」を特におすすめしたい。
隣接する温泉宿の「高半」と「御湯宿 中屋」と同じ湯沢本来の「湯元源泉」を楽しめるのは共同浴場ではここ「山の湯」だけ。一度入浴したら、この温泉の良さを忘れることはできないだろう。実際、私は湯沢・南魚沼あたりでスノーボードをした後は必ずといっていいほど利用している。
共同浴場だけに、館内施設といってもメインの浴場以外は小さな休憩所がある程度。その休憩所といってもエントランスから浴場への通路上にちょこんとある感じようなもの。スペース的に寝ころぶことはできないが、湯上がりに一息つくことはできる。
温泉に入浴すると体力回復というイメージがあるが、以外に体力を使うもの。10分間で80キロカロリーを消費するというデータもある。体で感じる以上に疲れるので、休息と水分補給が必要。特に長距離を運転する場合は体力回復に努めたい。
ちなみに建物前にある駐車場は狭く、急で狭いスロープを登らなくてはならない。除雪用のスプリンクラーが作動しているので、雪でも上がることも可能だが、できるだけ左寄せの大回りで右にハンドルを切らないと右後輪が空回りしてしまう。運転に自身がない人は、坂の下にある冬季駐車場を利用する方が無難だろう。
2013-2014シーズンもまもなく終わりを迎える。来シーズン、「やまんぽちゃ」に来る日を楽しみに待つとしよう!
(2015.8 更新)
住所 | 新潟県南魚沼郡湯沢町湯沢930 | TEL | 025-784-2246 |
URL | なし | 営業時間 | 6:00~22:00 [400円] |
駐車場 | あり | 定休日 | 毎週火曜日 (祝日・年末年始・お盆期間は後日振替) |
主な泉質 | 単純硫黄泉 | 温泉利用 | 源泉100%かけ流し |
浴場設備 | 内風呂 | 塩素消毒 | 塩素消毒なし |