清津館は清津峡温泉にある秘湯の宿。清流と渓谷を望む宿泊者専用の貸切露天風呂は情緒抜群。また棚田で作られた南魚沼塩沢産コシヒカリも絶品もの。関越道塩沢石打インターから30分ほどと、アクセスは案外よい。
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正月明け三連休の日曜日、温泉とスノーボードを楽しむため新潟にやってきた。この日の宿は清津峡にある「清津館」。日本秘湯を守る会の加盟宿である。
この日滑った石打丸山スキー場からは20分ほど。街中からの距離も近く、疲れた身体を温泉で癒やし、且つちょっとした秘湯気分も味わえるだろうと考えながら「清津館」を目指していた。
東京方面から国道17号を左に折れ、国道353号に入る。勾配のある曲がりくねった峠道の先に「清津峡」の看板が見えてきた。1月の新潟…周囲は一面の銀世界。山の中なので積雪の量も街中の比ではない。
道路の山側斜面からは今にも雪が崩れ落ちてきそうなほど、たんまりと雪を蓄えている。「たのむわ~」と心の中で唱えながら看板を左折、細い県道に入り進むこと数分。静まりかえった清津峡に到着した。
宿はどこかと探したが、ぱっと見では分からない。というか周囲の景色は白一色。建物という建物には白い綿菓子のように雪が積もっている。じっと見ると正面右側に宿らしき建物が見える。ダメもとで進んでみたら果たしてそれが「清津館」だった。
宿の第一印象は「思ったよりもしっかりとしているな」という感じ。秘湯の宿なので、もっと年季の入った木造の宿を想像していたが、目の前にある建物は鉄筋3階建て。雪の中に埋もれているが埋没しているわけではない。周囲の建物の中では一番立派な建物のようだ。
駐車場に車を停めようとしたら、貸切露天風呂の外観が目に留まる。こちらの方はいい感じに雪に埋もれ、渓谷の対岸も真っ白。いい感じだ。
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日本秘湯を守る会の加盟宿らしく派手さはない。思った通り静かに温泉を楽しむことができそうだ。そう思いつつ館内に入ると…三連休の中日なのだが館内はひっそりと静まりかえっている。
日本三大渓谷のひとつに数えられるだけに、新緑や紅葉の季節には多くの利用者で賑わうのであろうが、雪に閉ざされるこの季節は穴場なのかもしれない。
館内施設は売店とラウンジ(朝食会場)があるが、娯楽設備などはない。ビーには囲炉裏があり、ちょっとした休憩スペースになっている。またうさぎ2匹が飼われている。
ご主人に貸切露天風呂のことを聞くと一回の利用は30分、初回は無料だが二回目以降は300円かかるとのこと。ただ今日は空いている。いわばチャンス。今日の夕方に加え明日の朝にも予約を入れた。これは超楽しみだ。はやる気持ちを抑えつつチェックインを済ませ、早速部屋へと案内をしてもらった。
今回の部屋は広縁のある10帖の和室。バス・トイレは付いてないが掃除も行き届き、全く申し分なし。お茶とお菓子を食べたら早速浴衣に着替え、まずは大浴場「薬師の湯」に向かう。大浴場は空間が広く開放感があるが、どことなくレトロな雰囲がある。
ただ単に古いということではなく、昭和の香りを残す昔ながらの大浴場という感じだろうか。その浴場全体には硫化水素臭(ほとんど玉子臭)に満ちあふれ、大きな湯船には無色透明の単純硫黄泉が惜しげもなく注がれている。
湯船に入る前に身体と頭を洗ったが、シャワー・カランを見ると硫黄成分のためだろう、金属がかなり腐食しているところが目立つ。金属にとって硫黄は大敵。宿の苦労が思いやられたが、珠玉の硫黄泉が横たわる前ではそれも一瞬。躊躇なく温泉に滑り込む。肌触りはとても柔らかく、湯の温度は適温。アルカリ性の硫黄泉は本当に優しい。
温まること数分。急いで風呂を出てフロントに向かう。貸切露天風呂の鍵を受け取り、長靴に履き替えて雪に埋もれる露天風呂へ一直線。脱衣カゴに浴衣を脱ぎ捨てると寒いこと寒いこと。そりゃそうだろう。対岸の山肌を見れば一面の銀世界。まるで水墨画のよう。雪と温泉…いや絵になりますなあ。
だが寒さに感心する余裕もあまりない。露天風呂には冬季は温度調整する湯船とそのままのぬるい湯船があるが、真っ先に熱い方に飛び込んだ。いや~極楽極楽。本当の極楽は知らんが、これこそ極楽にちがいない。
そして身体が温まったらぬる湯に移動する…そんなことを繰り返していたら、あっという間に30分は過ぎる。普段自宅では30分入ると長いと感じるが温泉に入ると別の時計が起動するらしい。短い、短すぎる!
そして夕食。食事場所は2階の広間での用意になる。料理はやはり山の幸が中心。春に冷凍保存した山菜を筆頭に、新潟の野菜・豚・鮎などが献立に並ぶ。料理は始めからど~んとあるのではなく、温かい物は温かく、冷たい物は冷たく。とばかり順次運ばれてくる。ささやかではあるがその心配りが嬉しい。
そして最後のシメは南魚沼産コシヒカリ。しかしこのコシヒカリ、普通のコシヒカリではない。近隣の棚田で山の湧き水を使って育まれたもの。平地産とは違い、サイズはやや小振りでとても繊細。まるで絹のような優しい甘みを感じた。同じ南魚沼産コシヒカリでも平地産は味にボディがある。こんなにも味が違うことが実に興味深い。
食後は小休憩のあと、お約束の温泉タ~イム! 大浴場で身体がふやけるまで温泉を楽しんだことはいうまでもない…。部屋に戻り、布団の中でスキー場のコースマップや持参した小説を読む。
夜は本当に静かだ。携帯電波も届かず、完全に外界とシャットアウト。この秘湯感がたまらなくいい。時間が本当に静かに流れる。いや流れ方というか、絶対的に時間の流れが遅い。東京では味わえない貴重な時間を過ごしつつ眠りについた。
そして朝。大浴場で身体を温めた後、貸切露天風呂へ…と外に出たら雪が深深と降り積もっている。昨日は晴れていたがどうやら本日は雪らしい。露天風呂は丁度よい塩梅に雪が積もり、前日以上の水墨画の世界。湯船からは濛々と湯気が立ち上っている。これぞ冬温泉の醍醐味とばかり雪見風呂と洒落込む。しかし30分の時間制限がある。やはり短い。短すぎる!
朝食の用意は1階のラウンジ越路。牛乳とオレンジジュースがフリードリンクになっている。風呂上がりには牛乳だ! と意気込んで飲んでみたら…美味い。メチャメチャ美味い。近隣の牧場産の牛乳とのことだが、市販の牛乳とは違い優しい甘さが際立っている。
そして朝食も温かい物が順次運ばれてくる。一品一品が素朴ながら味がしっかりとしている。目立たたないところで手抜きがない。自慢のコシヒカリも美味しくおかわりをした。
食後にもうひとっ風呂浴びたいところだが、この日もスキー場に行かねばならない。名残惜しいが部屋に戻り出発の準備をする。それにしても今日はとても気分がいい。何せ素晴らしい温泉と料理を堪能できたのだから。
さらにご主人と女将、そして大女将もとても気さく。マニュアルではない人の良さがにじみ出てくる。これもこの「清津館」のよさのひとつだろう。できれば春の時期、大好きな山菜を味わいたい。
(2015.9 更新)
住所 | 新潟県十日町市小出癸2126-1 | TEL | 025-763-2181 |
URL | http://www.kiyotsukan.com/ | IN:OUT | 14:00 : 10:00 |
宿泊料金 | 14,800円~ [2名利用1人料金] | 立寄入浴 | 700円 |
客室数 | 和室 12 | 食事場所 | 夕食 広間 / 朝食 食事処(ラウンジ) |
駐車場 | あり | 送迎 | 清津狭バス停留所より送迎あり(要連絡) |
主な泉質 | 単純硫黄泉 含硫黄・ナトリウム-塩化物泉 |
温泉利用 | 源泉100%かけ流し |
浴場設備 | 大浴場・貸切露天風呂(宿泊者専用) | 塩素消毒 | 塩素消毒なし |