温泉新選組 > 温泉の定義
そもそも温泉の定義とは何だろうか? 温かいから、白くにごっているから、玉子のような臭いがするから温泉。漠然としたイメージはあるけど、イマイチ…というか、ぜんぜん説明できないという方にもできるだけわかりやすく説明します。温泉とはなんやねん?(これでもわからんわ! という方はごめんなさいっ)
温泉とは「温泉法」によって「地中から湧出する温水、鉱水及び水蒸気その他のガス(炭素を主成分とする天然ガスは除く)で、別表に掲げる温度または物質を有するもの」と定義されている。
噛み砕いて表現するならば、別表に記載される条件を満たせば、液体以外の水蒸気やガスなどの気体も温泉と認めましょうということ。
別表に記載された条件とは、
以上の用要件を満たせば温泉と認められる。
ただ「温泉法」というのは「何を温泉と認めるか」というものであり、温泉の種類、つまり「泉質」については「鉱泉分析表指針」という法律で定義されている。
よくテレビや情報誌などで「硫黄泉」「炭酸泉」などの泉質表記を目にすることがあるが、泉質表記がない(できない)温泉があることをご存じだろうか?
実は泉質名というのは「鉱泉分析法指針」によって「療養泉」と定義された温泉のみ表記ができる。
療養泉の条件とは、
上記のように、温泉法よりも厳しい条件をクリアする必要がある。
「温泉」だけど「療養泉」ではない。何やら頭がこんがらがりそうだが、このような温泉が泉質表記ができないということ。では何泉というのだろうか?
ずばり「温泉法上の温泉」という。
思わず「はい?」となりたくなるが、温泉分析表に「○△の含有量を満たす温泉法上の温泉」と記載されている温泉は珍しくない。
たまに「メタケイ酸泉」や「低張性温泉」などの泉質名を見かけるが、そのような泉質は存在しない。「温泉法上の温泉」だと見栄えがよくないために、そのような表記をしていると思われる。
※温泉法上の温泉が悪いということではありません。そのような温泉でも個性的な温泉は存在します。あくまでも法律上のはなしであって、善し悪しではないことを付け加えます。
「源泉かけ流し温泉」であるか? 温泉新選組では、このことを最も重視している。それは温泉の品質を第一と考えているとともに、次項で述べるが「塩素(次亜塩素酸ナトリウム)」使用と密接に関わってくるからである。
源泉かけ流し温泉というのは、実はかなり贅沢なことにほかならない。源泉かけ流し(完全放流式)とは、文字通り温泉を出しっぱなしで利用すること。
つまり常に新しい温泉を供給し続ける必要があり、浴槽サイズに見合った温泉を確保できる施設は決して多くはない。少数派というか、希と表現してもいい。
では多数派はどのように温泉を利用しているのだろうか。「源泉かけ流し」の対比語として「循環濾過」という言葉がある。
この循環濾過(式)というのは、温泉の汚れなどを循環濾過装置で浄化して再利用すること。温泉は限りある天然資源。石油と同じように無尽蔵にあるものではない。湧き出るところもあれば、湧き出ないところもある。
「省資源」「エコ」のため資源を再利用する。日本らしい尊い考えに思えるが、ここに落とし穴がある。
最近の濾過技術はかなり高レベル。処理した温泉を再利用しても人体への悪影響はないが、残念ながら濾過装置では人間の皮脂汚れまでは完全に除去できない。「ツルツル~」「スベスベ~」と感じていたモノは、実は人間の皮脂でした…なんてことになりかねない(すでになっているかも?)。
実は落とし穴はもうひとつある。循環濾過された温泉は衛生管理のために消毒する必要がある。この消毒こそ、もうひとつの落とし穴なのである。
「塩素(次亜塩素酸ナトリウム)」というものがある。実はかなり生活に身近なものとして、プール、水道、細菌・ウィルスなどの除菌、そして食品添加物としても使用される極めて殺菌・防腐効果の高い薬剤である。
しかしこの「塩素」、高濃度では死亡事故につながる「毒ガス」であるという点を忘れてはならない。たとえ少量でも、身体への直接的影響がある。
塩素の持つ強力な殺菌力による影響を例を挙げると、
上記のような影響を与える危険性を認識するのなら、「たかがプールに入るぐらい大丈夫!」と軽く考えてはいけない。一説によると、水泳選手の選手寿命が短い理由のひとつとして、「塩素」の影響があるともいわれている。
効き過ぎる「薬」は「毒」になることを忘れてはならない。健康のために利用する温泉が、不健康になる危険性を孕んでいる。極端な表現だが、塩素温泉は百害あって一利なしと考えざるを得ない。
しかし、実際には塩素を消毒に使用する温泉施設は多い。
理由は「利便性」と「コスト」
「銀イオン殺菌」や「紫外線殺菌」など他の殺菌方法があるが、「塩素」と比べるとその両面で劣る。また自治体(県)などの条令で強制に使用しなければならない地域もある。
「レジオネラ菌などの感染事故を起こしてはいけないから」「条令で決まってるから」と分量も目分量。「ここはプールか?」と思うほど塩素臭が充満する温泉もある。
これは「温泉」といえるモノなのだろうか?
いち温泉ファンとして、これを温泉とは思いたくない。
結局、温泉とは何なんだ?
いまいち、よくわからないというのが正直なところ。簡潔にいえば、法律によって規定されているから温泉なのだが、含有量や濃度についての定義はない。
ビールで例えると…
麦芽・ホップ・水に加え、副原料(米やコーンスターチ)が麦芽重量の半分を超えないものがビール、それ以外のものを発泡酒と定義しているが、温泉には規定がない。
湧き出た温泉に水をいくら加えても温泉であり、塩素等の消毒薬剤を加えても温泉なのである。極端な話だが、源泉(温泉)1%、水99%でも温泉であり、消毒薬剤の添加量が条例で定める分量を超えても温泉なのである。
ここに温泉定義の限界と問題がある。利用者自身で「よりよい温泉」を選ばざるを得ないのが現状なのだ。