王湯会館は川原湯温泉のシンボルであった王湯が移転して建てられた共同浴場。入口には源氏の家紋である笹竜胆(ささりんどう)が変わらず掲げられ、伝統の「湯かけまつり」も毎年1月20日の早朝にここで開催される。
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久しぶりに川原湯温泉を訪れた。前回訪れたのは9年前、当時はダム建設続行か凍結かの結論が揺れ動き、インフラ整備もできない温泉街はセピア色に映り、寂れた感が温泉街全体に漂っていたことを思い出す。
言葉は悪いが、寂れた場末のイメージ。でも、そんなセピア色な温泉街が、ボクは存外好きだった。
現在の温泉街は碁盤の目のように区画整理され、まるで新興住宅地のように整然と住居や温泉宿が建ち並んでいる。あまり人の気配を感じないのは新旧同じだが、対極ともいえる光景が目に映る。
はて、王湯はどこだろう?
国道から温泉街を見渡しても、それらしき施設が見あたらない。どうしたものかと思案する。あるとすれば住宅密集地の中だろうと、建物が立ち並ぶエリアに車を進める。
本当に誰もいない。住人がいないことはないだろうが、冬のこの時期に外を出歩く人は少ない。すると、しばらく進むと、測量をしているダム工事の作業員らしき人を見かけた。よかった、やっと聞くことができる。
車を降り、「すいません、王湯はどこにあるのでしょうか?」と尋ねると、「あの先に見える高台にあるよ。ただ駐車場はないから、ちょっと歩くけどね」とのこと。
あ、歩くですと?
確かに、高台をみるとそれらしき施設が見えたが、先に見える駐車場からはちょっと距離(数百メートルほど)がある。ちょっと不便だなあ…と思いつつ、車を止め、高台まで足を運んだ。
新しい王湯の正面に立ってみた。笹竜胆(ささりんどう)の家紋を冠する佇まいは、どことなく旧王湯の面影を残してはいるが、まるで別モノ。立派な施設に生まれ変わったなあ…というのが正直な感想。
当たり前だが、外観だけではなく、受付をはじめ何もかもが新しい。こんなにキレイになっちゃって…いまだ旧王湯の残像が脳裏に焼き付いているのか、違和感が半端ない。
まるでタイムスリッパーのような感覚で風呂場に行くと、それはそれはキレイな浴場が姿を現す。垢抜けちゃったのね…一体、ボクは王湯に何を求めているのだろう(苦笑)
平日の昼時だったが、ひとり先客がいた。湯船で目を閉じ、じっとうつむいている。寒いこの時期、温泉は最高のパラダイス。感じからして、おそらく近所のご老人だろう。さて、オイラもご相伴いたしますか。
コポコポ…コポコポ…
白い析出物が付着する石の湯口から、滾々と源泉が注いでいる。この光景をぼんやり見ていると、ふと旧王湯の残像が頭に浮かんだ。ああ、こんな感じだったかなあ…ちょっと違うかな…でも雰囲気は似てるかな。
たしかに旧王湯のエッセンスは感じる。
だが、温泉の感覚(風味)はちょっと違う。かつての源泉は油臭の混じった硫黄臭を感じたが、今の源泉(新湯源泉)は純粋な硫黄臭のみ。
でもこれを言っても始まらない。旧源泉はダムの底に沈んだし、塩素添加のない源泉かけ流しが受け継がれていることに変わりはない。それだけでも素晴らしいことじゃないか!
気を取り直して露天風呂に行くと、旧王湯とのあまりの違いに驚いた。旧王湯はいかにも増設しました的な視界が閉ざされた露天風呂だったが、眺望が実に素晴らしいのだ。
ダムは完成前なので水はまだなく、今は葉の落ちた木々しか見えないが、湖面を見渡すパノラマ、この眺望こそが新生王湯のウリになるのだろう。その光景を見てみたい。ダムが完成したら、また訪れよう。
(2017.4 更新)
住所 | 群馬県吾妻郡長野原町川原湯491-6 | TEL | 0279-83-2030 |
URL | http://www.kawarayu.jp/ [川原湯温泉観光協会] |
営業時間 | 10:00~18:00 [500円] |
駐車場 | 共同駐車場あり | 定休日 | 1月1日・1月20日 |
主な泉質 | 含硫黄-カルシウム・ナトリウム-塩化物・硫酸塩温泉 | 温泉利用 | 源泉かけ流し |
浴場設備 | 内風呂・露天風呂 | 塩素消毒 | 塩素消毒なし |